グラン魔族戦争 エリアル物語

今から100〜160年前の出来事です

1人の男が喫茶店の野外テーブルに腰をかけて空をみている
男の名前はエリアル、魔族と人間とのハーフである
エリアルは魔族と人間とのハーフであるが、人間の血が濃く
見た目はほとんど魔族には見えない
その分ここ、魔界では異端人物に見えてしまうのだが・・・・

「ふう・・・・・」
エリアルは目を閉じると深いため息をついた・・・・

そして再度目を開き空を眺める・・・・
ぼーと・・・
流れる雲を目で追った・・・
・・・・・
何分がが過ぎた
すると遠くから女性の声が聞こえた
「おーい!エリアル!どうしたのよ!」
机に座ってぼーとしていたエリアルに赤いバンタナを巻いた女性が走り寄る
エリアルは一瞬女性の方を見たが、すぐに再度空を見上げた
「ちょっと!無視しないでよ!!!」
女性はほほを膨らましながらエリアルの所へ辿りついた

女性は黒髪にショートヘア、赤いバンタナを巻いている
そして赤い服の上に茶色のレザーメイル
腰にはショートソードを掛けている
見た目はエリアルと同じく人間タイプではあるが、
実際はダークエルフと魔族とのハーフであった
肌はすこし茶色で耳もエルフ特有の尖った耳である
見た感じはとてもボーイッシュな感じな女性であった

「エリアル、どしたのよ?空なんか見上げちゃってさ」
エリアルは視線を女性へと移した
そして小声でぼそぼそと話し始める
「どうしたって・・・どうもしてないよ・・・」

エリアルの表情はむすっとしていた

「どうもしてないようには見えないんだけど・・・・」
「あ、横座っていい?いいよね」
そういうとその女性はエリアルの正面の椅子に腰を下ろした

「よいしょっと」

エリアルは一瞬女性の顔をみたがすぐに横を向いた

「何よ?何か不満?」

女性はエリアルを覗き込んだ

「な、なんだよ!!」

「なんだよ?だから元気ないからさ」

「えええい!うるさい!うるさい!」

エリアルそう言うとはそっぽを向いた

女性はエリアルの子供じみた行動をみると思わず笑いがでた

「あー!解った!」

そう言いながら女性は身を乗り出してエリアルの顔を見た

「わ、解ったってなんなんだよ!」

エリアルはびくりとしながら女性の方を向いた

「お前の兄貴が魔族軍の将軍になったからだろー」

「・・・・・」

エリアルの顔色が変わる
そしてエリアルは顔を真っ赤にしながら席を立った

「エリアル!?なんだよ?どこいくんだよ!」

エリアルは何も答えずに走り去った・・・
女性はふうとため息をつくとエリアルの飲みかけたお茶を手に取った
ごくごく・・・・
そしてそのお茶を一気に飲み干した
女性はコップをテーブルに戻すとエリアルの走り去った方向を見た
「馬鹿・・・・悩みがあれば相談してくれればいいのに・・・・・」

☆★☆★☆★

グリア=ル=トリフォニー

魔族将軍デルタの1人娘・・・・
だがグリアとデルタが過ごしたのは僅か2年
その後は一緒に暮らした事はなかった
エリアルにその事実をグリアは隠していた

エリアルにデルタの娘だと言ったら・・・
きっと一緒に居てくれなくなる・・・
私はそんなの嫌だ・・・・・
この100年の思い
あいつ・・・
解ってくれてるのかな・・・・
無理だろうな・・・・
エリアルってそこらへんが疎いっていうか・・・
女心を解らない男だから・・・・
・・・・・・
解ってくれないかな・・・
・・・・・
エリアル・・・・


☆★☆★☆★

エリアルとグリアの能力には歴然の差があった
人間の血が濃いエリアルより、グリアの方が数段レベルも上であった
エリアル自身もそれは良く理解していた
そしてグリアも・・・・
グリアとエリアルは魔族軍第12部隊に属していた
魔族第12部隊とは、主に魔法をメインに使う戦闘部隊だ
そこでエリアルはグリアと同じ小隊に属していたのだ

グリアは父親のコネを使えば簡単に部隊長になれるレベルだった
すべてにおいて優秀で、魔法については上級魔術師並みのレベルを誇っていた
魔法だけではない、戦闘技術も優れており、槍術や剣術などは達人の域であった
グリアは何度も小隊長や部隊長の推薦を受けた
だが決して受ける事はなかった

現在、魔族軍はある国と戦争状態にあった
その国こそ・・・・
時空王国グランである
もともと魔族が暮らしていた中央諸島の中心にある日グランが時空移動を
して現れた
そして、グラン王国は魔族に対しとても友好的であった
交流も深く、戦争をするような感じではなかった・・・
あの時までは・・・・

魔族軍はグランの魔道兵器の力により、圧倒的に押されていた
グランの絶対人口は魔族を遥かに下回る
それにグラン王国の人間は王族を除くと普通の人間が多数を占める
戦闘においても魔法においても、魔族の方が人間よりは遥かに優れていた
だが!
グラン王国には魔道兵器があった
魔道兵器とは・・・・・
魔法動力炉を備え、魔法金属エニグマスチールで出来た機械兵である
魔道兵器の標準装備は魔道砲・魔道レーザー・アームアックス・アームブレード
魔道ミサイル・魔道機関砲等・・・
魔道兵器1体で魔族一個小隊にも匹敵する能力であった
その魔道兵器でも一際能力が高いものが存在した
古代魔道兵器カスタム・・・・・・・
この魔道兵器第一号機は魔族のドラゴン部隊を一機で壊滅させた

圧倒的な火力を誇る魔道兵器も、絶対数はすくなく
エリアルの兄、ギフが開発したクローン技術による兵力増強や
デルタの開発した魔道武器(魔道兵器の動力に近いものを使った武器)
のおかげで少しだが体制を取り戻しつつあった

☆★☆★☆★

ある日・・・
すごいニュースがエリアルの元へと飛び込んだ
そのニュースとは・・・・
兄、ギフの謀反である!!!
エリアルの兄、ギフは魔族将軍であった
魔族将軍はデルタを含め7人存在したが、その中でも古代魔法や
クローン開発技術などの特殊能力に秀でた存在であった
だが、ギフは自分の考えていたクローン技術の活用方法と、
魔王の考えるクローン技術の方向性の違いに戸惑いを感じていた
そしてその戸惑いはついにギフを謀反へと導く
ギフの謀反の要因にもう一点あげられる事があった
それは・・・・ギフの母親(エリアルの母親でもある)はグラン王家の人間だったのだ
グラン王家の娘とある魔族の青年が恋に落ちた・・・・
そして王家の娘はグラン王家を捨てて魔族の青年と一緒になったのだ
その魔族の青年との間に2人の男の子が生まれた
ギフでエリアルである
王族の娘はエリアルを生んだ時に他界した
魔族の青年は深い悲しみに襲われたが、2人の子供を一生懸命に育てた
そして数年後・・・・
魔族とグラン王国が戦争になった・・・・

エリアルとギフはグラン王族の血を引い魔族であった
誰も知らない事実・・・そう、グリアも・・・・

ギフは謀反を起こし、魔族研究所へ立てこもっていると言う
そこでクローンで生み出されたイビルアイズを戦わせていると言う
だが、その謀反もわずか半日で収まった
そう、魔王自らがギフを封印したのである
捕まったギフは能力を封印する宝石を心臓へと打ち込まれた
そして99%の魔力を失う
ギフはその後ダークトランスによって次元の彼方へと飛ばされた
ここでエリアルとギフは約50年生き別れとなる

ギフの謀反後・・・・・
エリアルはギフと兄弟と言う事で危険分子扱いをされる事となる・・・

☆★☆★☆★

魔族グラン戦争・・・・
永遠に決着がつかないかと思っていた戦争
だが・・・・
ついに決着の時が来た・・・・・・
魔族はギフの残したクローン技術によって大量の戦闘下等生物をつくった
そしてその数は数十万
いくらグランの魔道兵器が強くても圧倒的な兵数差だけは補えない

魔王はグラン王国へ一斉攻撃を命令した
そして数十万のクローン兵がポルペ山を駆け上ってグラン王国を目指した

そのクローン兵の進軍の中にエリアルの姿があった
エリアルは第1089番突撃部隊の指揮官に任命されていたのだ
だが・・・
部下はすべてクローンの下等生物
命令など聞くはずもない・・・・
エリアルの役目はこの可等生物の監視である
そう、エリアル部隊は特攻部隊だった・・・・
グラン王国への片道切符を渡された特攻部隊・・・
エリアルはこれも運命だと受け止めた
そして死ぬ覚悟でポルペ山を激走した
死ぬ覚悟で・・・・

☆★☆★☆★

光はひとつの塊となった
時空の塔が激しく光り・・・・
そして1本の閃光が夜空へと駆け上った

ブワアアアアアアアン!!!

激しい音がグラン全土に響く
そしてその瞬間に夜空は真昼のごとく明るくなる

グオオオオオオオオオオン!!!

眩い光は空で反射した
そしてポルペ山の魔族軍へと直撃する

グワアアアアアン!!!

激しい爆音が鳴り響く・・・・
その瞬間!ポルペ山は真っ赤に溶けていった
魔族軍数十万は壊滅した・・・・
たった一撃の攻撃で・・・・

☆★☆★☆★

エリアルが緑の平原で眼を覚ました

「こ、ここは!?」

エリアルは辺りを見渡す
だが人の気配はまったくない・・・・・
ただ、ポルペ山の方向からは激しい炎が立ち上っていた・・・
エリアルは何かがおかしい事に気がついた
「え!?ポルペ山が・・・・ない!?」
山がなかった・・・
エリアルの目には通常は見えるポルペ山が完全に消えてなくなっていたのだ!
冷や汗が頬を滴り落ちた

「そうだ!グリア!グリア!!!」

エリアルはぼろぼろの体で立ち上がると大声で叫んだ
何度も・・・・何度も・・・・・
声が枯れるまで・・・
だが・・・
グリアから返事はなかった・・・

「グ・・・・リ・・・・ア・・・・・」

エリアルはその場にがっくりと膝を落とした
すると・・・・
エリアルの足元に真っ赤なバンタナが・・・・
それは何時もグリアが身に着けていたあのバンタナ・・・・
「グリア・・・」
エリアルはバンタナをゆっくりと手に持った
「・・・・・・・」
「おかしい・・・目から・・・・なにか・・・」
エリアルは初めて号泣した
ぼろぼろと大粒の涙が地面に落ちてゆく
そしてその涙は地面へと吸い込まれていく

「うううう・・・・・」
「グリア・・・・・・・」

エリアルは夜が明けるまで泣き続けた

☆★☆★☆★

「はぁはぁ・・・・」

エリアルはポルペ山をがむしゃらに走った
そして数時間が経ち、もう少しでグラン王国領土という所に差し掛かった
そこで小休止・・・・・
エリアルは額の汗をぬぐうと大きく深呼吸をした
そして息を整えると出発の準備をした
エリアルは剣を片手に立ち上がると今来た道を振り返った
そして小声で言った

「グリア・・・・さよなら・・・」

その瞬間!

「なによ!!!!」
「何がさよならよ!」

いきなりグリアがエリアルの目の前に現れた
エリアルは驚きを隠せない

「グ、グリア!?何処からきたんだよ!」

グリアはニヤリとしながら空を指差した
エリアルはグリアの指した空を見上げた

「あ!!」

エリアルは上空をみて再度驚いた
上空にはドラゴンが旋回していたのだ

「いいでしょ、エリアル!」

ピューィ!!!
グリアは口笛を吹いた
すると上空を旋回していたドラゴンがゆっくりとグリアの横へと降りてきた

「ド、ドラゴン!?」

エリアルは眼を疑った
確か・・・・グリアは親衛部隊に配属されて・・・街を守って・・・

「おい!グリア!どうなってるんだ!!」

エリアルは何故が怒鳴った

「急に怒鳴んないでよ!!!」

グリアも言い返した

「お前!親衛部隊はどうしたんだよ!?」

「親衛部隊?」

「そうだよ!」

「転属させてもらっちった」

グリアは満面の笑みを浮かべた
エリアルはがくりと肩を落とす

「転属って!?馬鹿か!!!」

「何よ!馬鹿って失礼でしょ!!!」

「馬鹿だよ!馬鹿!」

「何よ!文句あるの!折角ドラゴンナイトになって追ってきたのに!」

「だから追って・・・って・・・なんで追ってきたの?」

グリアは少し涙ぐみながらいった

「だって・・・エリアルに・・・・エリアルにもう逢えないかと思って」

「ぶ・・・何?俺が死ぬとでも思ってるの?」

「このエリアル様が死ぬものか!!!」

「まったく、俺は信用されてねぇなぁ」

だが、そんな言葉は今のグリアには通じなかった

グリアはすごく不安そうな表情で言った

「エリアル・・・・」
「この戦い・・・本当に・・・危険な戦いなんでしょ・・・・」

「・・・・・・」

エリアルは言葉を失った

そう・・・本当に死を覚悟していたからだ・・・・

「私、いやだから!エリアルが帰って来ないのやだから!」

そういってグリアはエリアルに抱きついた

「グ、グリア!?」

「駄目!!!・・・行っちゃ駄目!!!・・・死んじゃうよ・・・・」

「でも・・・・・俺は・・・・・」

「エリアル・・・・一緒に・・・・どっかいこう・・・・」

「え!?」

「私と二人で逃げようよ・・・・・」

「・・・・・・・」

「お願い・・・・」

エリアルの心は激しく揺さぶられた
そしてグリアの想いもしっかりと伝わった
エリアルは何かを決意した
そしてグリアの瞳を見ながら言った

「よし!逃げよう!」

その言葉にグリアは小さく言葉を返した

「うん・・・・」

エリアルはグリアを強く抱きしめた
グリアはエリアルの胸で目を閉じた・・・

その瞬間!空は真昼のように明るくなった!
グリアはハッとして目を開く!

「何?なんな!?」
「この胸騒ぎ!?何か起こる!?」

エリアルは辺りを見渡す
グリアは一番光の強い方向を見た
すると・・・・
その方向から巨大な光の塊がこちらに向かって落下してくる!!

「グリア!逃げるぞ!ここは危ない!!!」

エリアルはグリアの手を引っ張った

「エリアル!駄目!もう逃げきれない!!!!」

「グリア!何言ってるんだよ!」

「さっき二人で逃げるって約束しただろ!!」

「私・・・少し未来がわかる・・・駄目・・・これは駄目・・・」

「グリア?」

グリアはエリアルの手を引き離した!
そして数メートル走るとエリアルの方向を向いた

「な、何する気だよ!」

グリアはエリアルに向かって魔法を詠唱する!

「お、おい!」

エリアルは慌ててグリアの元へと走ろうとした瞬間
グリアの魔法詠唱が終わった!!

「エリアル!生きて!生きて!生きて!!!!!」
「私はエリアルに生きて欲しい!お願い!」

涙をぼろぼろと零しながらグリアは叫んだ

「グリア!馬鹿な事を言うな!」
「大丈夫!逃げれる!逃げよう!そこにいろ!今行く!!」

だが、グリアは涙を流しながら首を横に振った

「エリアル・・・・ありがとう・・・・・」

そして魔法がエリアルに向かって放たれた
「ダークトランス!!」

「グリア!止めろ!死ぬなら俺も!!!」

ブウウウウウウウウウン!!

「グリ・・・・・」

エリアルの体が光の塊と変化した
そして勢いよく空へと飛びあがった

「エリアル・・・・・・・」

グアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!

その瞬間ポルペ山に時空砲が落ちた

全ての物が塵と化す

全ての物が焼き尽くされる

全ての生命体が死に絶える・・・・

そして・・・

「エリアル・・・・・」

「生きて・・・・」

「生き・・・」

「・・・・」

「・・」

終わり





執筆後記
エリアルの物語です。
何気に裏設定でした(え
グラン王国は正しいと思いやった行動が魔族サイドからは
どう見えたか・・・・
この時空砲によって魔族グラン戦争は終結します
ですが・・・・
これがあのグラン崩壊を招くとは誰が予想したのでしょうか?
デルタはこの後、グランに潜り込み宰相となります
そして・・・・
グラン戦記へと続くのです・・・・・
何が正しいのでしょうか?







 
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